ぬるいですが性描写を含みますので苦手な方はご注意ください。






いつもはお付きの者だの女中だのが付いてくるのに、今日は何故か自分だけだった。
ひらひらとしためいど服が足に纏わりついてきて苛々したが、最初の頃よりはだいぶ慣れてきた。
幸村様は歩くのが早い。
歩幅が違う俺は早歩きというよりは小走りになりながらも懸命に付いていく。
というよりは付いていくので精いっぱいである。
半ば無理矢理履かされた真っ白くて長い足袋(すとっきんぐというらしい)は、つるつるした廊下で滑ってしまうからそれにも気をつけなければいけない。
「佐助、どうした」
「い、いえ……大丈夫です」
これでもっとゆっくり歩いてくださいなどと言えば、風呂どころではなくなる。
たぶん、これは俺の予想なのだけれど今通っている廊下に面している部屋に引き摺りこまれて、あられもない格好をさせられるのだろう。
「そうか。…春とはいえだいぶ冷えてきたな、お前も一緒に入るか」
「え……?」
答えを返す前にふわりと身体が浮く。すぐに抱えこまれたのだと理解した。
悲しいかな、床につくときに必ずこうやって抱えられるのでこういうことは慣れてしまっていた。
いつも通り強引な幸村様はそのまま広い風呂へと移動した。



幸村様の身体は俺とは全然違う。筋肉がついていてもひょろりと細い忍びの身体と違って、一見細く見えても裸になるとその筋肉は相当なものだということがわかる。
二槍を操っているのだから、当然と言えば当然なのだろうがやはり同じ男として羨ましかった。
「どうした?」
視線に気がついたのか、此方を向いた彼の表情は熱を帯びていた。そして、濡れた髪の毛が扇情的で不覚にも心臓がどくりと跳ね上がってしまう。
「い、いえ……」
どうにかこの状況を打破したくて、俺はせっけんと呼ばれる個体を握る。
これも奥州の伊達の殿様からいただいたものらしい。まだ会ったことはないが、幸村様と仲が良いのだろう、文のやり取りはよくしているようだ。
「背中、流しますね」
「うむ」
ごしごしと湯を使いながらせっけんで背中をこする。
ふわりと鼻孔をくすぐるのはせっけんの香り、幸村様の香り。
どくん、とあらぬところが反応したのが自分でもわかった。
匂いで反応するなんてまるで変態じゃないかと思う。
しかしこれはばれてはいけない、ばれたらもっと散々な目にあうだろう。
「……佐助」
「は、はい!」
「勃ったか?」
「――っ」
しまった、と思ったときにはもう遅かった。
沈黙は肯定の証である。背中を向いていた幸村様は急に此方を向いてにやりと口角をあげた。
「せっけんの匂いで勃起するようになったとはな、お前の可愛らしいまらが涙を流しておるぞ」
「やん……っ」
「今日は特別だ、この幸村がお前のこれを慰めてやろう。せいぜい可愛く鳴け」
俺の未熟なそれに幸村様の筋張った指が這わせられる。
それだけでびくんと反応してしまう俺は、本当に淫乱なのかも知れない(前にそう言われたことがある)。
「どうだ、嬉しいか?」
その問いに俺は必死に頷いた。もうそれは条件反射なのかも知れない、視界が涙でぼやけていた。


嬉しいだなんて、言えない




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