今日から新しい忍が来ると言う。
名前は、佐助。
まだ年端もいかないような少年らしい。
「そなたが佐助か」
「はい」
まだ声変わりをしていない高い声、骨格も出来ていない身体。
一体これで真田の役に立てるのだろうか。
「年は」
「分かりませぬ、年など忍には不要ですから」
恐らく十くらいであろう、佐助は下を向いたまま答える。
「頭を上げよ、佐助」
「……」
これから仕える男を見よ、と言ってこちらに顔を向かせる。
思ったよりも整った顔だった。大きな瞳がじっとこちらを見ている。
「私が真田源次郎幸村だ、よろしく頼むぞ」
「はい」
その瞳は少しの希望と、大きな不安に満ちていた。



まだ声も変わっていない忍に何をさせようか。
「幸村様、佐助です」
障子の向こうから声が聞こえる。
忍だというのにきちんと声掛けをしてくるなど、珍しい者もいるものだとこっそり笑う。
「入れ」
そう声をかければ、佐助は音もなく部屋に入ってきた。
「何か、御用でしょうか」
昼間とあまり変わらないようすだった。
「ああ、明日からこれを着て過ごせ」
「……?」
赤い風呂敷に包まれたそれを見て佐助は首を傾げる。
「開けて良いぞ」
「はあ……」
かさりかさりと僅かな布の擦れる音が静かな部屋に響く。
「これは…?」
「めいど服と呼ばれているものでな、奥州の独眼竜からの贈り物だ」
白を基調としたそれは、これでもかというほどフリルがついている。
丈は短いが、佐助の身長ならば膝下くらいにはなるだろう。
「他の者に着せるのは勿体無い代物であるし、俺が着るのもな。というわけでお前にやる」
「これでは忍べません」
確かにこの服ではひらひらしていて動きにくいだろう。
「着てみなくては分からないだろう。脱げ」
強い口調で命令すれば、佐助は嫌そうな顔を一瞬浮かべるがすぐに着ているものを脱いでいく。
一人で着れそうにも無かったので、立ち上がって手伝ってやった。
「足が……スースーして気持ち悪いです」
「だが似合っておる、気持ち悪いのもすぐに慣れるだろう」
佐助は何か言いたそうな顔をしているが無視して言葉を続ける。
「これも忍の訓練だぞ、佐助」
分かりました、と素直に頷く少年を見て思わず笑みが漏れた。


全てのはじまり




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やりたいほうだいですいません…! しょた助と男前幸村様のお話でした。